アマチュア無線家JH0ILLのつぶやき

ある日、突然、アマチュア無線を再び、やってみようと思い付き、十数年ぶりに再開した無線局のつぶやき。

IC-7100の入手

IC-7610が突然、故障した。故障情況は、暫く電源を入れていると突然、何も聞こえなくなる。その症状が暫く通電したままにしていると必ず起こるようになった。そして、DUAL-Wを入れておくと、VFO A側だけがこのような症状になる。すなわち、アンテナの問題ではなく、無線機内の故障である。しょうがないので、IC-7610をメーカーに送り、修理をしていただくことになった。
私には、無線機はIC-7610以外に、VX-8があるだけで何も持っていない。以前はIC-7000を持っていたが、手放してしまった。そのため、HFをワッチすることも出来ないし、VX-8ではV/UHFの運用はままならない。持って歩くには便利なハンディ機であるが、5Wという出力の割に大きな発熱の問題、暫くすると送信できなくなってしまうもどかしさ、そして、マイクのPTTボタンが固く、連続して送信状態にするのが辛いのである。
そこで、もう一台、無線機が欲しくなった。あまり、無線にお金をかけることも出来ない身分になっているため、今回は中古から探してみることにした。
当初、考えた候補は次の優先順位で定めた。

  1. 移動免許の範囲(50W以下)であり、技適とスプリアス規制が適応されていること
  2. HFが出来ること
  3. CWの対応のために、新たな追加機能を入れずに済むこと(CWフィルター)
  4. 出来れば、V/UHFも使えること
  5. 出来れば、オールモード機であること(HF+V/UHFだと4が通れば、5は満足)
  6. 可能ならFT8なども拡張可能なこと
  7. 出来れば、IC-7000は買いたくない(過去に使っていたので)

このような中で、次の候補を挙げた。実は、私はHF機で八重洲無線をこれまで使ったことがないので、八重洲無線の無線機を当初、欲しかった。候補は次の通り。


八重洲無線: FT-891M(新品),FT-991AM(中古),FT-817(中古),FT-857DM(中古)
アイコム: IC-7100(中古),IC-705(中古)
ケンウッド:TS-2000(中古)


八重洲無線のものは、どれもよかったのだけど、何かいま一つ不安があった。やはり使ったことが無いメーカーのものは中古となるとなおそらなのかもしれない。IC-7100がちょうど、ヤフオクで出ており、物も結構良いものであった。IC-7000を以前に使っており、IC-7000の発熱という問題が克服されているらしいことは聞いていた。IC-7000は、受信状態にしていても筐体がチンチンになる。これを考え始めた時、以前、3.5MHzのCW和文で交信したとき、そのOMから聞いたのを思い出した。冬、IC-7100を使って、コタツに潜りながら無線をしているという話である。IC-7000もフロントパネルを外すことができるが、CWのパドルやマイクは本体にあるため、あまり便利ではないけど、IC-7100はコントローラ部分を1本で延ばせ、そのコントローラにスピーカ、ヘッドフォン、マイク、パドルを接続できる。すなわち、線1本だけ延ばせば、その範囲で運用が自由になるわけだ。
また、FT-891MではUSBポートだけでFT8に接続できないという仕様のようであり、これまた、首をかしげる仕様である。ということで、今回はIC-7100を何とか手に入れたいと思った。
さて、入手後の感想である。現在、移動免許のところで、変更申請中なので、運用は控えている。聞くだけでも十分だからである。IC-7000を過去に使い、IC-7610も使っていたので、その操作感の違いはよく分かるのだと思う。


利点:

  • コンパクトである。ローテータコントローラの下に本体の置き場所が定まった。自らが主張しないのは、私好みである。
  • 144MHzと430MHz帯はオールモードで運用可能。IC-7000のときのように、V/UHFでまたSSB/CWが運用できるときが来た。
  • IC-7000を踏襲しているので、VFOやメモリの切替などは同じ感覚で使用できる。
  • なんといっても、50Wの出力が出せる。50Wであれば、私の普通の運用では十分だ。
    いざというときは、IC-7610+AMPがあるから。
  • 7MHzでP.AMPを入れることができる嬉しさを感じる。ここは、IC-7610には無い感じである。OVFも点かないので、安心。いかに、ダイレクトサンプリング方式が面倒だと思っているのを知る。
  • 最小限の機能しかないようで、あらゆる機能が揃っている無線機という感じだ。
  • コントローラを寝床のところまで持ってこれるので、寝ながら無線が出来そう・・・
欠点:
  • IC-7000に比べれば、ほぼ、欠点らしいものはない。これから、運用してく中で発見するのかもしれない。いずれも、実際の運用で気づくのだろうと思う。
  • IC-7610に比べては、価格の差があるのでしょうがないが、
    スペクトラムスコープが無いのが最も欠点だ。最近、この絶大な機能に頼りきっていた自分を知った。例えば、バンド内のどこに信号が出ているかを知ることはとても便利な機能であることを改めて感じた。IC-7100だと、どうやって受信し、探していくのか、途方に暮れる感じがした。
  • CW機能はAPFが無いこと、ピッチや速度は裏で設定すること。これは値段から言えば、しょうがない。
機能面で、価格が2倍以上のIC-7610と比べてもしかたない。だから、IC-7000よりも改善されていればいい。D-STARは初めて体験するだろから、今から少しワクワクしている。
最近、私の運用スタイルでは、3.5MHzでCW 5W,SSB 10Wでの運用が殆どである。これで十分に楽しめる。今後、このIC-7100の入手を契機に、他の周波数でも、この50Wで運用してみたい。
特に、移動免許での取得のため、固定のような縛りがない。少しずつ、移動用電源やアンテナなどを手にれていき、将来、近くの市町村からの運用やコンテスト参加などをやってみたいと思う。これによって、無線の楽しみ方の幅が広がるのだろう。

SSB,CW,FT8のモード別の状態・・・

最近、ブログに記事を書かない(遠ざかっていた)のだが、最近、気になって調査したことを報告する。
今年、3月初めから中旬にかけてJ38R(南米グレナダ)のDXペディションが行われた。JAを含むアジア圏内からはとても難しいエリアに位置しており、私自身もとても期待していた。特に長野県の局はWorkedするまで、かなり厳しい状況だったのではないだろうか。私の家の東側100mのところには山の麓があり、低入射角度からの信号はとても弱くなってしまうようである。北米西海岸あたりなら、それほど影響は無いようであるが、遠距離になるほど、厳しい状況になる。J38Rも同様で、実際、7MHzと10MHzのFT8の信号は殆どデコードが出来ないという結果であった。CWの場合、ペディション局はAMPを常用してくれるのでなんとか聞き取れるのだが、FT8となるとベアフットになるため、非常に厳しくなる。
SSBでは、14MHz以上でなければ聞こえなかったのである。J38Rと交信する中、私が普段、DXとの交信に用いるモード、SSB,CW,FT8の実際の聞こえ方の差を調べてみようと思った。
では、どうやってその差を調べるか。それは、実際に自分の信号を聞き較べればいい。でも、それは以前は難しかったのであるが、今は、WebSDRと言われる、インターネットによって受信機が公開されているのを用いればいいのである。

実際に、14MHzと3.7MHzの2周波数で調べてみた。14MHzは九州のWebSDRを使い、3.7MHzは長野県内のWebSDRを用いた。最初に、0.5W(IC-7610の出力設定の最小)にして、CWで試験電波を出す。SSB(プロセッサはOFF,帯域は2.9kHz)で試験電波を出し、CWの信号とほぼ同じ程度になるまで、出力を増大する。
FT8では、送信をJTDXで行い、WebSDRの受信音をWSJT-Xの受信信号として入れてやる。ただし、遅れ時間が1.7秒程生じるがデコードできれば良しとする。そして、その値を読む。


14MHzのケース
 CW(1W):RST559,    SSB(10W):RS55,  FT8(1W):0~4dB
   ただし、バックノイズはS2程度であった。


3.7MHzのケース
 CW(3W): RST559,  SSB(30W):RS55,  FT8(3W) : -2~0dB
バックノイズは、S4程度であった。


このように、SSBの受信強度(了解度も)がCWと同じようにするには、10倍の強さが必要。アンテナ、電力を要することになる。CWはDX交信に有効。


FT8では余裕なのかというとそうでもない。3.7MHzでFT8:-14dB程の信号でも、発信していることは耳で聞き分けられた。FT8で-10dB以下の信号は、CWならRST319~439程度になる。Sメータは振っていた。
だから、CW+1kWの信号が実レポートでRST339しか得られない場合(J38Rの7MHz)なら、FT8では-10dB以下に相当するので、FT8+100Wの信号は、-20dB以下になると思われる。そうなると、CWでは受信できても、FT8では難しい状況になる。益して、SSBや様々なQRMの中で出ているFT8信号は更に過酷な受信条件となると言える。


分かったこと:
SSBは、CWよりも10倍の電力(アンテナ利得)が必要である。SSBで交信する局に、ビックガンが多いのは当然だろう。こちらは、CWで交信を楽しもうと改めて思った。
FT8では一般的に出力を低減して運用される。特に、MSHVやF/Hのように同時に複数の信号が出られると、その分だけ、S/Nが低下する。故に、FT8はCWよりも条件によっては受信は難しいみたいだ。ペディション局がFT8で運用する場合、これからも出力を絞ってくるだろうから、FT8での交信難易度はCWよりも高いままが続くのかな?
それよりも、CWでコンデションが良い条件のとき、パパッと交信出来てしまう方がいいのだけど。私としては、もっとCW運用者が増えることを望むだけだけど・・・

CW運用時、FULL Break-inか、それともSemi Break-inか

ツイッターで「CW運用時、皆さんはフル/セミ、どちらで運用しますか?」というアンケートを取りましたら、なんと、307票の方から投票がありました。本当に、ありがとうございました。
まずは、アンケート結果を報告します。

307票の内、38.8%(119票)がフルブレークインで運用、52.1%(160票)がセミブレークインで運用、9.1%(28票)がその他という結果でした。
様々な方から、コメントをいただきましたので、匿名にてお伝え致します。

  • 基本Full Break inかな。無接点リレーのリグが増えてほしい
  • リグによってはフルの時もあります〜
  • 両方です。
    フルだとパイルで打鍵中に他局にコールバックが開始された瞬間打鍵を止められるから。
    ゆっくり1対1の場合はセミブレークイン。
  • コンテストでランしてるときはフルブレークインです。
    その他はセミブレークインですね
  • 珍局スプリットでない限り、セミです。PTTで送信状態を保持するときもあります。
  • 他の局への応答中が分かれば即停止できますから フルが殆ど
  • セミのフル寄り
    一応空白で反対だれかのトーンが聞こえる程度
  • 少しでもリレーを労りたいので…😅
  • リレーがうっせぇなので、セミブレークインです😂
  • リレーがガチャガチャ行ったり、符号の合間にガーガーノイズが聞こえると気が散りますよね。
    ペディションやったりキー局なんかでパイルを捌かないといけない状況ではフルブレークインの必要があるのかな。
  • 最近はCWは全くやっていませんが以前のやり方からフルに一票。
    SSBでも一瞬PTTを離して受信しながら送信していたりします。これだと送信中に相手から呼ばれても気付くことができ、時間の無駄を少なくして多くの局とできたりすると思っています。
  • 意外とフル派とセミ派が拮抗してるんですね。90年代のRIGより最近のRIGのほうがフルブレークイン時のリレー音がやかましくなったような気がします。
  • リニアアンプが対応していないのでずっとセミブレークインです。フルブレークインできるリニアに買い替える気力も財力も、もう無いし。
    (いつもリニア入れてる訳ではありませんが…)
  • 国内のpileアップやDXのup指定ではフル、それ以外ではセミですね。
  • でもね、セミとは言っても、文字の間に受信が入る程度に短くしています。
  • 怒涛のパイルに参加する時はフルで
    他、殆どセミです。
    やはりリレー音が気になるリレー接点寿命が気になります。
    SSRを使ってのブレークインってないのかな?
  • コンテストやパイルアップの時だけフルブレークイン、他はセミブレークイン。リレー接点の消耗を懸念して。

コメントを頂いた方からの情報をみると、フルブレークインを使っている方は、「送信中に、直ちに受信状態に切り替える必要」からのようです。たとえば、コンテストでCQランニングしているとき、相手が呼んできたら、直ちに、送信を止めて、相手の応答に対応すれば、スムーズな反応ができるということです。また、パイルアップの状態で、相手局が何らかの信号が出てきたら、すぐに受信に切り替える、スムーズな運用には欠かせない機能です。
ところが、これだけ便利な機能なのに、あまり使わない理由は、3つの回答がありました。

  • リレー音がうるさい
  • リレーの寿命が心配
  • リニアアンプが対応していない

リレー音がうるさい一番の理由は、送受信の切替にメカニカルリレーを用いているためです。このことは、リレーの寿命が心配であるということにもつながっています。そして、リニアを使っておられる方にとっては、リニアアンプのリレーがフルブレークインに対応していないということもあります。


まず、フルブレークインを用いた通信はどのようにされているのかをウィキペディアに掲載されていましたので、紹介します。

フルブレークイン運用をQSKオペレーションと呼ぶようです。QSKでは、相手の送信中に割り込むことにより、より会話に近い通信ができることを言っています。QSKには、T/Rスイッチ(送受信切替)の技術がとても重要で、高速かつ長期間に耐えるために真空式リードリレー、若しくはPINダイオードが用いられることが要求されるようです。
QSKプロトコルがあり、QSK対応している局は、最初にQSKを表明するようです。また、QSK?で相手に可能かどうかも聞くことができるとあります。割り込みには、1ドットの短い信号を送る、そして、それを受けた局は、一時停止するか、"K"を送信するという手順があるようです。


ここからは、私のラインナップ(IC-7610+ACOM1000)の場合です。
IC-7610の送受信切替の部分は、ネット上に公開されている?サービスマニュアルに記載されています。TUNER UNIT(1/2)の回路図に送信と受信のラインが表記されており、その分離をする回路が目的のT/Rスイッチになります。

※上図で橙色部分が送信側、緑色部分が受信側、すなわちRL552が対象のT/Rスイッチ


RL552は、サービスマニュアルの部品表から、SIP-1A-12Yという部品でした。これはリードリレーで、通常のメカニカルリレーに比べて、動作時間が1/10程度で寿命も一桁長いという特徴を持っています。寿命は2億回、動作時間は0.3m秒という値です。
以前に、24WPMでコールサインを連続して出したとき、4日間で200万回の動作に達すると計算したことがある。

すなわち、1日の連続送信で、50万回のリレー動作があると考えればいい。そうなると、2億回となれば、400日に相当する。ここまでの回数となると、他の部分が壊れる可能性が高いため、IC-7610の場合は、しばらくは安定して運用可能だと言える。
一方、ACOM1000は、QSK対応と言っているが、以前、ARRLコンテスト中に壊れた。その理由が、バキュームリレーの寿命が200万回であり、酷使すると、すぐに寿命に到達するためかと思う。
※ちなみに、IC-7300はT/Rスイッチに、メカニカルリレーFTR-B4CA009Zを使っており、機械寿命で500万回、電気的接点寿命で10万回と意外にも小さい。FTDX101の場合は、AGQ200A12Zのメカニカルリレーで機械寿命は5000万回とあった。FT891,FT991Aも調べましたが、同じリレーを使っていました。


フルブレークインについて、調べていると面白い記事が見つかった。DJ0IP局が提示しているQSKの情報である。
https://www.dj0ip.de/ricki-leaks/amp-interfacing/qsk-realities/


OM曰く、短点間を聞き取ることはあまり意味がなく、文字間を取り出すことで十分ではないかということ、Near-QSKを提案している。
なお、同OMは、アンプのリレー遅延が生じることを認識すべきあると言っておりました(https://www.dj0ip.de/ricki-leaks/amp-interfacing/cw-amp-sequencing/)。それは、送信遅延がないと、リレーの切り替わるタイミングでホットスイッチングが生じるためであり、部品やエキサイターに、影響を及ぼす恐れがあることを認識しておくべきでありました。ACOM1000の場合、リレー遅延を6mSce保証しているので、IC-7610の送信遅延を10mSecに設定した。
なお、私の運用スタイルは、セミブレークイン運用。理由は、アンプのリレーの耐久性と、バックグランドノイズが聞きずらいし、特に、セミブレークインで運用していて、不都合は感じていないため。たまに、ヘッドフォンをつけたときに、使ってみることがあるけど、だいたいは直ぐにセミに戻してしまいます。