アマチュア無線家JH0ILLのつぶやき

ある日、突然、アマチュア無線を再び、やってみようと思い付き、十数年ぶりに再開した無線局のつぶやき。

1kWのインターフェア対策

2020年3月号にはアンテナチューナの勧めとして特集記事が掲載されていた。過去に500Wで7MHz,14MHzで変更検査を受けたとき、色々と学びながらコモンモード対策を勉強した。
その後、私が仕事の製品のEMC対策においても非常に役に立つ方法である。ノーマルモードとコモンモードがどのように違うのかは、いろいろな文献や記事がインターネットに存在する。例えば、以下のページなどがいい。

すなわち、ノーマルモードは決められた回路の中で行って帰ってくるノイズ、+側と-側は逆相のノイズとなる。アマチュア無線で実際に対策されている対策は、ローパスフィルタやアンテナチューナというものになる。それは、ご存じの通り、GNDラインには何の素子も入っていない。同軸ケーブルの心線側に定められた定数のコンデンサ、コイル等で形成されているものだ。たとえば、IC-7610に存在するLPFユニットはカットオフ周波数が定まっており、それ以上の信号はアンテナを介して出さないように作られている。また、ACOM 1000のリニアでは終段のπマッチ回路で周波数以外の増幅を低減している。このように、通常は高調波と呼ばれるHF以外の周波数に対しては電波を抑える設計が個々の機器に備わっている。
しかしながら、私たちアマチュア無線家はその機器をアンテナに接続し、商用電源に接続して運用をしている。実はこの部分がきちんと対応しないとインターフェアは無くならないのだ。
実際、現在、色々な製品はEMC規格が存在しており、その対応を行わなければ、世の中に製品を販売してはいけないようになってきた。ひとつは、EMIと呼ばれ、自らが他の無線機器に妨害を与えないこと、また、EMSと呼ばれ、他の装置からの妨害を受けにくくする問題である。実はEMIとEMSは表裏一体で、どちらかがきちんと対応できれいれば、片方が強い構造になるものなのだ。ご存じのように、USBケーブルやPCの接続ケーブルにはやたら、まるい円筒状のものがついている。あれがEMC対策部品に相当し、殆どがコモンモード対策で行われているものだ。
私の無線システムでインターフェアが何も考慮していない状態を表示しよう。

このように一変、なにも問題なく接続でき、これでもきちんと電波が飛んでいく。
そこではIC-7610で内蔵LPFを通した後の信号はアンテナケーブルを介して、恐らくその信号がきちんとACOM1000で増幅されて強い信号がアンテナから出ていくことだろう。
しかし、IC-7610の内蔵LPF前段の信号はどうしているかというと、消えてしまったわけではない。ちゃんと、GNDとどこかの内部回路間でエネルギーが発生している。これらは残念であるが、回路と筐体はコンデンサなどで結合されているため、少なからずもIC-7610の筐体に電波が残っているとみた方がいい。すなわち、その筐体も全体的に高調波を含むHF信号が存在しているのである。
上図で、IC-7610とACOMはアンテナで接続され、かつ、制御ケーブルで接続されている。実はこれだけでなく、底面のスチール机を介しても接続されていることが想定される。たとえ、電気的な接続が無くても、高周波的には浮遊容量を介して接続されていると見た方がいい。高周波的に、先ほど話したように、IC-7610の筐体がいろいろな電波を出している。そして、それはACOMに接続されたとき、やはりACOMでもGNDとアンテナの芯線とで増幅するわけだが、ACOMのGNDもIC-7610同様に揺れているだけでなく、高周波信号のため、インピーダンスをもっており、回路ができて高周波電流が流れ、それによりACOM1000のGNDも揺れることになる。ACOM1000が電波源として高周波で揺れれば、そこから延びる線は、正にホイップアンテナに化けることになる。すなわち、電源ラインがアンテナに、アースケーブルがアンテナに、アンテナの同軸ケーブル、ローパスフィルタも含んでアンテナになるのだ。
それでは、現在の私の対策例を以下に示す。

上図のように無線機個々に無線機から出る線をインダクタンスを挿入して高周波的に切っている。
アンテナには、ACOM1000のLPF(HY3K)後段にコモンモードフィルタCF5KVXを挿入した。このHY3Kは3kWまでのローパスフィルタでACOM1000のスプリアス対策用としていれたまでのものである。工事設計書には必要みたいである。さて、アンテナのコモンモードフィルタは、コイルが内蔵しているが、コイル段数が少ないと、低い周波数帯での効果が落ちてくるようで、上記のフィルタは、モノが大きいが低周波数でも減衰量が大きいように設計されている。1kWということで3.5MHzでのインターフェアを防止するために挿入している。ちなみに、これがないと、過去200Wで50mも離れたお宅でインターフェアが発生している。ゆえに200Wも未対策では危険である(昔は500Wで苦労したもの。200Wとは4dB程度の差なので、ある程度きちんとしたインターフェア対策は必要と思う)。
また、ACOM1000の電源は、キャンセル巻きにしたコアを2段にいれ、また、アースケーブルにも2段のW1JR巻きのコアを挿入。アースケーブルは、高周波用のアースではなく、電撃からの保護用アース線である。ゆえに、高周波電流は流す必要はないのでコアを挿入した。もちろん、IC7610とACOM1000の間にも、コアを入れて保護接地線を結合してある。
IC-7610とのアンテナ接続は、W1JR巻きのコアをいれてある。制御ケーブルには3ターンのコアを2段に入れている。また、マイク、パドル、ヘッドフォンには3ターンのコアを入れている。更にDC電源とIC-7610の間には数段のフェライトコアを入れている。
これは、すべてコアにより、無線機、アンプを高周波的にフローティング状態にしている。ほぼ、これでインターフォン、ラジオ、テレビのインターフェアは完全に収まっている。あと、机は木製にして、無線機間の高周波やケーブルでのコア挿入による効果を確保した。せっかくコアを入れて、高周波的に減衰しても、その二次側でスチール製棚なのにより高周波結合をしてしまっては意味がない。高周波は、浮遊するコンデンサや並行線などで簡単に結合してしまうのだから。


変更検査前の調査でこれ以外の対策として1つだけ行ったことをお伝えする。
それはTVI対策として、UHFのアンテナ直下ブースタの混変調対策でる。1kWでは、付近の電界強度が比較的高いため、テレビブースタのアンテナ側のアンプがきちんとBPFなどで周波数帯域を制限していないと、直ぐに受信アンプが飽和状態となりテレビが乱れる現象が起こる。そのため、UHF用のハイパスフィルタをUHFアンテナとブースターの間に挿入した。効果は抜群、直ぐになくなった。


もし、インターフェアで苦しんでいる場合は是非、コモンモードというものに注目していただきたい。アンテナ自体と原因となる線が離れている場合は、コモンモードによる電源ラインやケーブルからの誘導はないものかを確認するといい。DC電源のトランスは一応分離されているが、高周波的には減衰量が十分かは不明である。そんな場合は、どこかできちんとコアにより分離をするといいかもしれない。

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