NB42Xのブーム長の影響
NB42Xは、7MHzも使えるアンテナでブーム長はたったの2.6mしかない。ミニマルチでは、位相給電と呼んでいる。ブーム長が極端に短いため、本当にビームパターンが効いているのか?とても不可思議なアンテナである。それでも何となくフロントゲインがあって、バックも効いておるように感じる。MMANAを使って、ブーム長の影響がどのように差ができるかを確認してみた。
ただし、短縮するパラメータの入力方法が不明であるため、フルサイズのHB9CVのブームを短くしてシミュレーションを行ってみた。
自由空間でのフロントゲイン、F/B比は4.5mのブーム長と比較して以下の通りであった。
アンテナ フロントゲイン F/B比
HB9CV(4.5mブーム) 6.56dBi 12.37dB
NB42X(フルサイズ時) 5.56dBi 7.14dB
ただし、リアルグランドとして、計算すると、地上高18mで、
HB9CV(4.5mブーム) 9.84dBi 18.36dB
NB42X(フルサイズ) 9.06dBi 12.03dB
となる。仰角は29度程度でほぼ同じ値となる。すなわち、地上の影響が大きく、それにより、ゲインが上がり、かつ、F/B比が改善されるようである。ブーム長を狭くすると、ゲインの影響は少ないが、F/B比が十分に取れなくなることが分かる。実際のアンテナも10dB程度しかF/B比がないのでほぼ同じ感じなのだろう。それにしても、フロントゲインが落ちないことには驚く。
一方、シミュレーションで興味を引くのは、地上高の影響である。地上高を変化させることで、フロントゲイン、F/B比、仰角はどのように変化するのかを確認してみた。
以下がその結果である。アンテナは同一のものとする。
地上高 フロントゲイン F/B比 仰角
30m 10.29dBi 8.50dB 18.7度
25m 10.35dBi 7.78dB 22.1度
20m 9.53dBi 11.13dB 26.8度
18m 9.06dBi 12.03dB 28.7度
15m 8.40dBi 10.54dB 33.3度
12m 7.81dBi 8.00dB 38.7度
10m 7.48dBi 5.96dB 43.3度
これを見ると、大きくフロントゲインは落ちておらず、10m高であっても、利得がある程度得られることが分かる。ただ、F/B比は適切な高さがあるようだ。
ここで本当に10m高ではだめかというと、MMANAにて10m高での最適なアンテナをシミュレーションすると、なんと、その高さで9dBiのフロントゲイン、17dBのF/B比がとれる寸法もあるようで、ようはどの高さで動作するように作られているかであり、きちんとした調整をすれば、高性能になりうることが分かった。ただ、仰角だけは殆ど変わらず、高さに影響するようだ。
F層を使ったときの1回反射の飛距離は、単純に
Df=2×F層高さ/tan(仰角)=2×400km/tan(仰角)
となると思われる(概算)。
18m高の場合は28.7度なので1461m、30m高では2363m、逆に10m高では849m程度となる。北米・EUまでは約8000km以上となる。すなわち、反射回数はかなり多くなることが分かる。長野からだと、九州・北海道で800km程度となる。地上高が高いとそれだけ、反射回数が少なくなり、DXでの飛びはよくなるのだろう。
なお、仰角については、使用可能な周波数も影響があり、
最高使用周波数=sec(90度-仰角)×臨界周波数
となる。臨界周波数が分かるとき、そのときの最高使用周波数は、仰角が小さいほどに、高くなるため、仰角の小さいアンテナはより有利になると思われる。
ちなみに、本日朝9時の臨界周波数は、以下のNICTが提供するイオノグラムから、約6MHz相当であった。
すなわち、最高使用周波数を7MHzとした場合の仰角は、58度以下であることが想定される。それ以上の発射角で送られた信号はすべて電離層を突き抜けることになる。
これより、不感地帯も想定でき、イオノグラムからはF層の高さが300km程度のようなので、
Df=2×300km/tan(58) =370km
すなわち、計算上では半径370m以内は不感地帯となり、隣県は聞こえない症状が発生していたと思われる。